「マーケティングは難しそうだから…」と手をつけない中小企業は非常に多いです。
しかし、売上を左右する“最初の一歩”は、実は専門知識もセンスも不要。
自社の強み・弱みを整理するSWOT分析 だけで、戦略の方向性が一気に明確になります。
この記事では、マーケティング初心者でも“今日から5分で始められる”シンプルなSWOT分析の作り方と、中小企業ならではの活かし方を解説します。
SWOT分析とは?初心者でも使えるマーケティングの基本ツール
SWOT分析は自分のビジネスの長所や短所をいつもと違う視点で見る方法です。英語のStrength(強み)、Weakness(弱点)、Opportunity(チャンス)とThreat(気を付けるべきこと)のそれぞれの頭文字から名づけられた分析方法で、それぞれの項目を4つのボックスに分けることで、自分のビジネスをちょっと“他人視点”から見ることができます。分析を始める前に、それぞの項目の理解と引き出し方から始めましょう。
Strength(強み)
Strengthはあなたのビジネスが持つ強み、長所、ポテンシャルのことです。「自分のビジネスのすごいところはなに?」と聞かれたときに答えることです。日本人が苦手な質問で、聞かれるとすぐに答えが出てこなかったり、なぜか焦ったりする部分です。
でも大丈夫!自分の強みを引き出すのは意外と簡単です。自分とライバルを比較すればすぐ出てきます。自分に次のような質問をしてみてください:
Q.なぜそのビジネスを始めた?
Q.他のライバルと比べて、あなたの商品は何が違う?
この2問だけでいいです。答えがすぐに、そしていくらでも出てきます。出てきた答えが全部あなたの強みです。私たち(Intencia)が翻訳会社をスタートしたときを例として出してみます:
Q.なぜそのビジネスを始めた?
A.いくら用語集、スタイルガイドや翻訳メモリを提供しても、高品質な翻訳を提供する業者がいなかったから。マニュアルやWebサイト翻訳などの大規模な翻訳ではそのニーズがあるため、翻訳会社を立ち上げた。
Q.他のライバルと比べて、あなたの商品は何が違う?
A.翻訳に試験はなく、誰でもフリーランス翻訳者になれます。翻訳業界はほぼ100%フリーランスでできているため、全般的に品質が低い。私たちの翻訳者は世界でも指折りのインフラ企業で10年以上の実務経験を持つプロです。用語集やスタイルガイドはもちろん、最新のCATツールと独自の技術で最も厳しい要件に応えられる翻訳の提供が、私たちと他社の違いです。
このような感覚で2つの質問に答えてみてください。あなたの強みがすぐに出てきます。
Weakness(弱み)
Weaknessはあなたのビジネスが抱える弱みや弱点です。聞かれることはあまりないのに、悲観的な人ほどスラスラ出てきます。弱みは次の質問で簡単に引き出せます:
Q.他のライバルと比べて、自分が負けるところは?
資金面で弱いや人数が足りないという“一般論”はいくら出せますが、ここに注意が必要です。憶測ではなく、自分が実際に見たものまたは客から見えるであろうことに限定してください。ライバルの方が資金と人員が厚いことを実際に見たのならそれでいいですが、台所事情を知らないのに憶測で答えを並べると正確な分析結果が出ません。次は上記に続く私たちの事例です:
A. 翻訳者の人数と対応言語が決まっているため、他社のように「いつでも」・「どんな言語でも」対応できません。
Opportunity(チャンス)
Opportunityはあなたのビジネスにとって“チャンス”として捉えられるものです。それぞれの業界とタイミングで内容が変わりますが、私たちの翻訳業界で例えるとこのようになります(2016年の立ち上げ当時):
外貨獲得のため、日本が観光立国を宣言した。→インバウンド向けの翻訳が増える。
日本市場に参入する外資が多い。→外国語から日本語への翻訳などが増加する。
このような形で、“チャンス”になりそうなことをOpportunityとして捉えます。
Threat(脅威)
Threatはあなたのビジネスにとって“脅威”として捉えられるものです。まさにチャンスの真逆です。上記の例でいうと:
翻訳会社は星の数ほどある。
価格崩壊が既に起きている。
このように、あなたのビジネスにとって脅威になりそうなことをThreatとして考えればいいです。
なぜ中小企業こそSWOT分析が必要なのか
ルームミラーだけを見てバック駐車したら、事故を起こす可能性が高まります。1つの視点では危ないからこそ、左右のサイドミラーを加えた視点で安全にバックできます。
経営もそうです。1つの視点だけで会社を動かすと、物事を見誤る可能性が高まります。社長の主観だけで動くことが多い中小企業やファミリービジネスこそ、客観的な視点が必要です。SWOT分析のメリットを詳しく見ていきましょう。
方向性がないまま動く“手当たり次第マーケティング”を防ぐ
ビジネスをやっていると、良い商品だけでは客が降ってこないことが分かります。頑張って作った商品を売るためにはマーケティングが必要です。
しかし、マーケティングに取り組もうとすると、ペルソナやSTP、カスタマージャーニーなどの意味分からない単語や概念がいっぱい出てきます。マーケティングに必要不可欠だろうと思って、その一つ一つを大真面目に勉強しようとすると時間だけ取られて、売り上げにつなげることなく挫折することがよく話です。
SWOT分析をしておくと問題の所在が分かるので、何を勉強すべきかもピンポイントで分かります。勉強すべきことが分かれば、手当たり次第のマーケティング対策を防ぐことができます。時間とお金を効率良く使えるだけではなく、少ない投資で売り上げを伸ばすことができます。
強みを最大化し、弱みを消すシンプル戦略が立てられる
「攻撃が最大の防御である」。スポーツやゲームを本気でやったことある人ならば、この言葉の意味がよく分かります。ビジネスでも同じ。自分の強みをさらに磨くことで、弱みのダメージが減らせます。
SWOT分析はここでも力を発揮します。強みや弱みを客観的に掴めるため、より正確な現状把握ができます。的を射た一石二鳥の対策が打てるため、シンプルなマーケティング戦略を実行できます。
経営判断のスピードが上がる
一人で色々考えていると不安になったり、迷いが出たりするものです。ルームミラーだけでバック駐車するのと同じです。ぶつかったらどうしよう?
そうならないためにも、家族や社員を交えたSWOT分析をやってみてください。視点が異なる色んな人を議論に混ぜることで、あなた一人では気づけなかったものが見えてくるはずです。異なる視点から得られる気付きが不安や迷いを払拭してくれるため、経営判断のスピードが間違いなく上がります。
5分でできる!超シンプルSWOT分析の作り方
SWOT分析は紙とペンだけで簡単にできます。書き方とポイントを説明します。
まずはSWOT分析の目的を明確にしよう
SWOT分析はやりだすとアイデアがいっぱい出てきますので、コントロールしないと収拾がつかない事態になります。そのため、まずは分析の目的を決めることが大事です。
例えば、「新規顧客を増やしたい」や「商品の単価を上げたい」などの目的を決めておくと、アイデアが四方八方に暴走することを防げます。
内部環境と外部環境を理解しよう
SWOT分析は「内部環境」と「外部環境」に分かれます。Strength(強み)とWeakness(弱み)は内部環境に入ります。なぜなら、強みと弱みは自分で努力すればいくらでも変えられる要素です。逆に、Opportunity(チャンス)とThreat(脅威)はいくらもがいても自分の力だけでは変えられないため、外部環境に入ります。外部環境は社会や市場の変化に起因していると考えた方がイメージしやすいです。
土台を作ったら書いてみよう
紙のど真ん中を通る縦と横の線を引いて、左上、右上、左下、右下の4つのブロックを作ります。左上にS、右上にW、左下にO、右下にTを書きます。ここまでできたら土台が完成。あとはそれぞれのところに強み、弱み、チャンスと脅威を入れていくだけです。
迷ったら“数字の裏付け”を付ける
途中で入れるべきかどうかで迷ったら、参考になる数字を入れておくといいです。個数や金額などのデータがあると、より具体的に把握できます。
実際のサンプル:日本酒を作る酒蔵のSWOT分析例
地方の酒蔵をモデルとしたSWOTの分析例を作成しました。結果はもちろん異なりますが、ものを作って・売る中小企業が置かれている状況が似ているため参考になります。
モデルは100年の歴史を持つ地方の酒蔵で、1970年代をピークに売り上げが減少し続けています。2005年に代替わりしてから、昭和の酒くさい辛口に別れを告げ、それまでと違う酒米や酵母でフルーティーさと甘さを全面に打ち出したラインナップに変更しました。前と比べて一定の支持があるものの、物価高や社会の変化によって10年後の未来が描けない状態。売り上げを拡大するアイデアが必要です。
その背景を踏まえると、SWOT分析を次のように進めます。
強み
- 現代のニーズに合った味づくり
- 経営者は変化を恐れない
弱み
- 施設増強に回す資金がないため、大量生産できない
- 宣伝は一切行っていない
チャンス
- 海外にの日本酒人気が高まり、輸出の余地がある
- 海外の日本酒人で日本に来る日本酒ファンがいる
脅威
- 国内の消費量がピーク時の3分の1以下
- 日本酒を作ろうとする海外勢が増えている

SWOT分析の結果を戦略につなげる方法
SWOT分析の結果を見ると様々な“気づき”を発見できます。しかし、重要なのはここからです。次のように項目を組み合わせることで、あなたのビジネスに合った戦略が取れます。
強み × チャンス=積極戦略
あなたが持つ強みでチャンスを狙って行けば、かなり高い確率でビジネスの成長につなげられます。上記の事例で考えると、海外の日本酒人気の高まりを狙って、変化を恐れない経営者が積極的に海外へ進出するチャンスが伺えます。また、時代に合った日本酒で日本に増えつつある海外観光客を取り込むことも考えられます。
弱み × チャンス=改善戦略
弱みとチャンスを掛け合わせることで気づきが生まれることもあります。例えば、設備増強はリターンが見込めなければ難しい投資ですが、海外の大きな市場を狙うことで、投資以上のリターンを手に入れる可能性があります。海外進出にマーケティングは欠かせないので、その弱みを今すぐ改善すべきものだと認識すれば、その経営判断が成功する確率も上がります。
強み × 脅威=防御戦略
脅威に対して強みを上手く活用すれば、ビジネスを守る戦略も考えられます。例えば、国内の消費量は「好みの変化」と「経済力の低下」で減りつつあります。そこに仮説を立てて、今の時代が好む味と価格帯の商品を開発すれば、売り上げの減少を緩やかにできます。
弱み × 脅威=撤退判断にもなる
弱みと脅威の組み合わせから様々な見方ができます。宿題を洗い出すこともできれば、撤退の判断に役に立つこともあります。例えば、海外進出を恐れ、インバウンドの取り込みも怠れば、減り続ける国内消費と一緒に衰退していく道しか残りません。海外勢が日本に参入したら、そのスピードはさらに早まります。
まとめ:SWOTは“安くて強い武器”。まずは今日5分書くだけでOK
SWOTは誰でも簡単にできる分析法です。紙とペンだけでできるのに、客観的な気づきが得られるため、ビジネスにとって“安くて強い武器”と言えるでしょう。重要なのはしっかりテーマを決めることです。早ければ5分でできるため、是非試してみてください。





