あなたが今持っているスマホは日本製ですか?高くてもなぜ海外製を選ぶのか?
日本の“失われた30年”に深く関わっている問題を社会とビジネスの視点から分かりやすく説明します。
日本のビジネスが海外勢に勝てない理由
あなたがいま持っているスマホのメーカーはどこですか?
技術力や品質が世界一とうたいながら、身近なスマホ、パソコンや家電などが日本製ではなくなった理由はどこにあるのか?誰もが疑問に思いながらも、ハッキリ見えてこない仕組みを見ていきましょう。
日本は技術を極める力が世界一
カメラのレンズ、機械式腕時計、家電などいずれも海外などで発明されましたが、日本人がマネして作ったら本家より高品質なものが次々とできた歴史があります。正確な寸法で物を作り、改良しようとする性格がその要因だったでしょう。
作る物の精度が日本の技術力そのものであり、海外勢が逆立ちしてもできない越えられない壁です。
技術をお金に変える能力(事業化力)がない
しかし、その技術力からビジネスをするとなると話が一転します。恐らく、世界で一番下手な国です。
マネはできても、市場が求めている新しい商品をゼロから作ることはできません。こうして、完成度の高い携帯がいつの間にかiPhoneに変わり、日本製ばかりだった家電製品が少しずつ海外のものに乗っ取られています。
半導体も80年代に世界シェア50%を握りながらも韓国に取られ、パソコンと液晶ディスプレイの優位性を失い、つい最近はテレビを作る日本メーカーがいなくなりました。モノ作りや品質が高いのに、なぜビジネスでは負けるのか?
もう一歩踏み込む - 技術力と事業化力の違い
技術力と事業化力にどのような違いがあるのか?馴染みが薄い事業化力の難しさを見ていきましょう。
モノ作りは簡単!相手は素直なモノ
経験したことある人なら分かりますが、モノ作りはびっくりするぐらい簡単です。物は文句言わず、コロッと考えが変わったり、嘘をついたりすることもありません。
作る知識、必要な道具や機械類さえあれば、自分の集中と技術でモノがいうことを聞きます。モノ作りは科学や論理が支配する世界なので、材料や作り方の“レシピ”ができれば再現性が高いです。再現性が高いから大量生産できます。
事業化は難しい!相手は掴みどころのない人間
人間を相手にする仕事(サービス業など)に従事する人の多くは、休暇を自然豊かで静かに過ごしたがる傾向があります。その理由は謎です。
人間ほど不規則で何を考えているか分からないものはありません。商品を売ることは、その掴みどころのない人間と向き合うことです。人間を読み、ニーズを把握して、最適な方法で提案する必要があります。条件が毎回変わるため決まったレシピはなく、モノ作りと比べて再現性が圧倒的に低いです。昨日成功した手法でも、今日やったら大失敗に終わることもあります。
事業化は「環境」と「タイミング」の見極めも重要
商品が売れるかどうかは人間の他にも、環境とタイミングも大きな影響を与えます。刻一刻変わっていく政治・経済や国民感情、社会情勢などの条件を考慮する必要があるため、事業化を成功させるためには素早い決断と失敗を重ねる勇気が求められます。
事業化力が育たない原因は失敗を許さない日本独自の文化
なぜ日本に事業化力が育たないのか?その原因は日本社会独自の文化にあります。
失敗したら終わり - “減点方式”の社会構造
ちゃんとした人は小・中・高を経て偏差値の高い大学に入って、上場企業に就職してから結婚する。ゴールデンウィークは海外旅行、年末年始は帰省、そのサイクルを定年退職までリピート。これは社会が押し付ける“夢のような世界”です。
そのレールから外れたらどうなるのか。落ちこぼれというレッテルを貼られ、這い上がることがほぼ不可能です。元に戻れないという恐怖心から、全員がとにかく問題が少ない、無難な道を選ぶようになります。
敷かれたレールを運良く進めればいいことがある。レールから少しでも逸脱したら人生が終わる。いくら頑張っても点数が増えることはないから、過剰なぐらい失敗を避けようとする心理が働きます。これが成長の足を引っ張る減点方式の社会構造です。
「誰が責任を取るのか」で会社も悪しき文化を継承
上司の顔色を伺いながらプロジェクトを進める部下たち。より大きな成果が見込める案を出すと条件反射のように飛んでくる「責任取れんのか?」というやる気ない発言。
会社で失敗すると責任者がプロジェクトから外されたり、窓際に追いやられたりします。当然、レールから脱落したい社員はいません。そのため、アイデアのメリットや実現可能性を議論するより先に、「失敗したら誰が脱落するのか」という防衛反応が反射条件のように出てきます。
誰もレールから脱落しない方法を探るべく、「前例踏襲」が始まります。つまり、メリットが最小限に留まりますが、失敗が少ない方法でプロジェクトを進めることができます。万が一失敗したとしても、「前例を踏襲した」ということにすれば、誰もレールから落ちることはありません。その前例を作ったのは役員ボードの誰かなら、なおさら安全です。
事業化との相性が最悪な文化
事業化を成功させるためにはコロコロ変わる人や集団の心理と、環境、タイミングなどを見極める必要があり、一発で成功するのはほぼ不可能です。モノ作りの試作品のように、長い時間を掛けて、失敗を重ねて、ようやく納得できる結果が出ます。
失敗が一発退場を意味する企業文化では、事業化が至難の業であり、その難しさを理解している人なら誰もやりたいと思いません。無理ゲーです。実際にやっている人たちは無難な前例で毎日を乗り越え、必死にレールにしがみ付いています。
事業化でイノベーションが起きず、事業化力が上がらないのはそのためです。日本特有の文化がビジネスの可能性を阻害していました。
成功するためには失敗を重ねる必要がある
初めてスーパーマリオブラザーズやった時のこと覚えていますか?ジャンプの感覚がつかめず、ほとんどの人は最初の穴に落ちたでしょう。試行錯誤を繰り返す内に上手くなり、それぞれのステージをクリアしていったはずです。ファミコンのコントローラーを人生で初めて握って、一発クリアした人はいません。
技術力も失敗の積み重ねで成長している
1つの商品を開発・完成するために、100以上の試作品が作られます。100回以上の失敗を繰り返して、ようやく1つの商品が完成します。モノ作りの世界ではそれが常識なので問題ありません。しかし、1個目の試作品が失敗しただけで作った人が島流しされたら、この国の技術力が今のように育っていたのだろうか。
モノ作りは長年の経験で技術が蓄積されるといいますが、蓄積されているのは数々の失敗とその失敗を乗り越えようとする職人の気持ちです。
事業化力はさらに何十倍もの失敗が必要
事業化の場合は人、環境とタイミングなどの前提条件が常に変化するため、モノ作りよりさらに多い“試作”が必要です。しかし事業化の場合、失敗したらすぐに“責任問題”になり、担当者が島流しされてしまいます。
技術力を高めるための試作(失敗)は許されるが、事業化では1回の失敗は担当者交代です。先の失敗を経験していない新しい担当者も同じ失敗を繰り返し、企業の競争力が永遠に上がりません。
事業化力を育てて、ビジネスの競争力を上げる方法
日本の足を引っ張っている原因が分かったら、解決に取り組むのは簡単です。ただし、失敗を恐れない勇気が必要です。
会社が一切のメリットを取るなら、責任も会社が一切取るもの
社員が考えた新商品が大ヒットしたら、会社の知名度やブランドイメージが上がり、売り上げが急増します。メリットの一切を受けるのは会社なのに、失敗した時はなぜ社員個人が責任を負わなければならないのか?
「社員の手柄は会社のもの、会社の失敗は社員の責任」のように、理不尽な考え方を持つ組織はまだ多数存在します。青色LED訴訟のように、社員にそのメリットを全く還元しないことが正義なら、責任を押し付けないことも筋でしょう。
社会で幼いころから染みついた“歪んだ責任論”をビジネスの現場から排除するためには、「責任は会社が取るものだ」という企業文化を作り、徹底する必要があります。
組織が失敗を重ねて、その失敗を“資産”として残す
日本では事業化が成功したら、担当者がそのノウハウを握ります。事業化が失敗したら、検証しないまま後釜が選ばれ、失敗のノウハウは処刑された担当者が握ります。いずれの場合も、担当者が組織からいなくなれば、成功とノウハウの知識が消えます。
海外勢の考え方は違います。事業化の成功も失敗も組織の責任です。その知識と経験は会社に蓄積されますので、担当者がいなくなっても簡単に再現できます。もちろん、失敗も組織の失敗なので、日本のような犯人捜しはありません。社員が自由にアイデアを出し、失敗を恐れずに「やってみよう!」とします。多くのイノベーションが生まれるのはそのためです。
まとめ
ビジネスの競争力は技術力と事業化力の2つの力で成り立っています。日本は優れた技術を持っていますが、事業化力がないため海外勢にすぐ市場を取られてしまいます。スマホ、家電、半導体などを失ったのは決して製品が悪いからではありません。市場を捉えて、ビジネスを継続させる力がないからです。
圧倒的な購買力を持った“1億総中流社会”の援護射撃を失った日本。生き残るためにはビジネスの競争力を高めることが最優先課題です。そのためには失敗を許し、積み重ね、資産に変える取り組みが必要です。





