翻訳の品質を左右するのは翻訳会社の肩書ではない。
「誰が、何を使って、どうやって翻訳したか」という“翻訳プロセス”だ。
その理由と仕組みを見ながら、“役に立つ”翻訳を手に入れるためのポイントを分かりやすく説明します。
高品質な翻訳を翻訳会社の規模や実績から求めていませんか?
売り上げを伸ばす、知名度を上げる、コンペを勝ち取る。“役に立つ翻訳”が欲しいとき、どんな基準で翻訳会社を選びますか?会社の規模?対応言語数?それとも実績やISO?
実は、翻訳会社の“肩書”は翻訳の品質と関係ありません。その理由を見ていきましょう。
翻訳しない翻訳会社
あなたの原稿を翻訳するのは翻訳会社ではありません。別の第三者です。
翻訳の依頼を受注した後、多くの翻訳会社はフリーランス翻訳者に業務を委託します。そのため、翻訳の品質は翻訳会社ではなく、実際に翻訳を担当するフリーランスが大きく影響します。
翻訳業界では小さな翻訳事務所から世界トップ5の翻訳会社まで、ほとんどがこの仕組み(請負契約)で稼働しています。つまり、翻訳の品質は会社の規模に関係なく、実際に対応する翻訳者の腕に掛かっています。
契約の限界は品質の限界
請負契約は人件費を回避する方法として建設や配達業界など、あらゆる業界で使われています。必要な時だけ人が使えるため、利益を重視する企業にとって都合がいいからです。受注者であるフリーランスにも「どうやって作業する」や「どんな手順で進める」、「どのペースでやるか」などを自由に決められるため、お互いにメリットがあります。
しかし、そんな便利な請負契約にもデメリットがあります。指揮命令です。指揮命令は翻訳会社がフリーランスに対して具体的な作業方法や工程、スケジュールなどについて直接指示や管理を行うことであり、指揮命令が認められた場合は偽装請負に当たる可能性があります。
翻訳会社の肩書はフリーランスの前では無意味
翻訳会社がどんなに素晴らしい肩書を並べていても、フリーランスを直接コントロールできないため無意味です。肩書は翻訳会社の営業・マーケティング施策を示すものであり、翻訳の品質と関係がありません。
翻訳の品質に直接影響を与える3つの要素
翻訳会社が翻訳の品質に直接関わっていないなら、役に立つ翻訳はどうやって生み出されるのか?注目すべきポイントは次の3点です。
誰が翻訳する
翻訳者になるためには免許も資格もいりません。「私はこの今日から翻訳者だ」って本人が言ったら、止める人も法律もありません。あいさつ程度の外国語で支離滅裂な文章しか書けない人もいれば、現地の人を凌ぐ言語能力で理路整然な文章を書く人もいます。翻訳者によって品質のバラつきがあるのはそのためです。
何を使って翻訳する
Wordファイルを上書きしながら翻訳する人もいれば、プロが現場で使うCATツールをお見事に使いこなす翻訳者もいます。
どうやって翻訳する
高品質な翻訳を作るためには資料やデータは欠かせません。用語集やスタイルガイドを使うのか、使うならどのようにチェックするのか、どのタイミングでチェックを行うのかなど、その戦略と方法で翻訳の精度が決まります。
「翻訳プロセス」はその3要素の組み合わせ
モータースポーツの“F1”を想像してみてください。プロのドライバー、最速のマシン、有能なピットクルーが揃って初めて表彰台の一番高いところに立てます。
そこに、プロのドライバーではなくお母んが運転したらどうなるのか?
最速のマシンが軽トラに変わったら、いくらプロのドライバーでも優勝できないでしょう。ピットクルーに関しても同じことが言えます。つまり、この3要素の組み合わせによってレースの結果が大きく変わります。
翻訳でいうと、「誰が」・「何を使って」・「どうやって翻訳する」という3つの要素の組み合わせによって、翻訳の品質が大きく変わります。その3要素の組み合わせを「翻訳プロセス」といい、その組み合わせこそが翻訳の品質を決めます。
高品質な翻訳を生み出す翻訳プロセスとチェックすべきポイント
それでは、どのような翻訳プロセスが高品質な翻訳を生むのか?その組み合わせと理由を説明します。
高い言語能力と技術力を持つ翻訳者
翻訳で最も重要なのは言語能力です。英語から日本語へ翻訳する人の場合、母国語である日本語はもちろん、英語も不自由なく使えることが最低条件です。英語圏の国で“自力で”一人暮らしし、現地の人が持っているレベルの英語能力が必要です。
言語の次に大事なのは技術力です。技術力は主に“文章を書く能力”と“ITツールを扱う能力”です。
文章は誰でも書けますが、理路整然で分かりやすい“情報が伝わる文章”を書けるのはごく僅かです。記事などを書く“ライター”に匹敵する文章作成能力も翻訳者に求められる技術の一つです。
また、翻訳を効率良くこなし、“現実的な”納期を守るためにはパソコンは欠かせないツールです。簡単なプログラミング知識で作業の効率を高めながら、原稿の情報を守るためのITリテラシー・技術も必要です。
クライアントと翻訳者のニーズを満たすCATツール
紙とペンやWordの上書きで翻訳したら、チェックは目視のみになってしまいます。それでは高品質な翻訳を作ることは不可能です。
品質の高い翻訳を作るためには、クライアントの要望と翻訳者が必要な機能を持ち合わせているCATツールが必要不可欠です。近年はアドオン型やクラウド型など、多種多様なCATツールが作られましたが、2026年現在もプロのニーズに応えられるのは2,3種類のみです。
バターナイフでは手術できません。「良い仕事はいい道具から」と言われるように、良い翻訳には良いCATツールが必要です。
CATツールができることについて詳しく知りたい方はCATツールを使うべき理由をチェックしてください。
翻訳の品質を高める戦略と知識
良い翻訳者と良いCATツールさえあれば、良い翻訳が出る訳ではありません。意外かもしれませんが、「翻訳は準備が8割」です。
品質の高い翻訳を作るためには、スタイルガイドと用語集を事前に準備し、その内容をCATツールとチェックリストに落とし込む必要があります。なぜなら、数万件にも及ぶチェック項目を暗記して、目だけで漏らさずチェックできる人はいません。
そのため、スタイルガイドと用語集を事前に用意し、それぞれのチェック項目を自動的にチェックするための仕組みづくりを準備することが重要です。
用語集について詳しく知りたい方は用語集を使うメリットをお読みください。
まとめ
高品質な翻訳を依頼するとき、依頼者の多くは翻訳会社の規模や肩書などを見て判断します。しかし、翻訳会社は契約の性質上、フリーランス翻訳者を直接コントロールできません。そのため、翻訳会社の規模や肩書は翻訳の品質に直接関わっていません。
翻訳の品質は「どんな腕の翻訳者」が、「どんなCATツールを使って」、「どんな準備と戦略」で翻訳を行ったかに掛かっています。
依頼時の細かい注意点等については、翻訳依頼に失敗しないためのポイントを確認してください。












