翻訳会社の選び方が難しいのは会社の数が多く、実際にどう翻訳しているか分からないからです。
この記事は翻訳業界の仕組みを説明しながら、翻訳会社の選び方に失敗しないためのポイントを解説します。
なぜ翻訳会社が多いのか?
翻訳会社は星の数ほどありますが、そこには2つの理由があります。一つは、外国語が全く分からなくても始められる商売です。現に、ほとんどの翻訳会社のトップや中の人(仕事を振り分ける人)が母国語しか分かりません。
2つ目の理由は、翻訳会社は儲けが出やすい商売です。世界のほとんどの翻訳会社は“アウトソーシング”でできています。つまり、仕事が入ったときに一番安い翻訳者または別の翻訳会社に再委託し、残りのマージンを取るビジネスモデルです。つまり、ブローカーです。翻訳者の人件費がなく、再委託で簡単に利益調整できるため、参入しやすいビジネスです。翻訳会社が星の数ぐらいあるのはそのためです。
翻訳会社選びが難しい理由
多くの発注担当者が翻訳会社選びに苦戦するのは、そもそも「どう選べばいいか分からない」からです。美味しいトマトは色、重さやお尻の白い筋を見れば選べますが、良い翻訳会社はどこを見ればいいのか分かりません。
良い翻訳会社を見極めるために、次の知識を持つことが望ましいです:
- 翻訳業界の仕組み
- 一般的な翻訳プロセス
- 翻訳の品質を決定づけるもの
最低限の知識を持つことでブローカーに当たる確率が劇的に下がります。
本当に悪い翻訳会社の簡単な見分け方
上には上があれば、下にも下があります。中抜きを行うブローカーは確かに悪いですが、それより悪いのは詐欺を働く会社です。海外ではたまに見かけますが、簡単に見分けるポイントがあります。
極端に安い料金は要注意
それぞれの翻訳会社が提供する翻訳の品質はバラバラなので、翻訳業界で“相場”という考え方が通用しません。しかし、その相場より極端に安い料金(10円以下は一つの目安)で翻訳を提供する会社があります。そのような会社は多くの場合:
- 高品質な翻訳をうたう
- CATツールを使わない
- 機械翻訳を隠れて使っている
- 1円以下の“翻訳者”にチェックさせる
翻訳は当然使えない代物ですが、それより深刻なのは原稿と依頼者の情報です。「無料=情報を取られる」が“常識”になっている世の中で、タダ同然の翻訳には裏があることを忘れないでください。極端に安い単価の業者を見つけたら要注意です。
翻訳会社を選ぶときに気を付けるべきポイント
仕事を取るため翻訳会社は種々のセールスポイントを打ち出します。それぞれのセールスポイントとその裏に隠されている事情を説明します。
対応言語数
世界100以上の言語を対応していれば良い翻訳ができそうなイメージがありますが、イメージだけです。対応言語数が多い翻訳会社はブローカーである可能性が高いです。
100以上の言語に対応できることは、200人以上の翻訳者を雇う必要があります。ビジネスで需要のある言語は10言語程度なので、20人が働いて、180人がほとんど待機していることを意味します。10%が自分たちと残りの90%の給与を稼ぐのは現実的なビジネスモデルではありません。
そのため、対応言語数を強調する翻訳会社は依頼を受注して、自分の利益分を引いて、他の翻訳会社・翻訳者に仕事を転がしている可能性が高いです。
登録翻訳者数
翻訳者の数が多ければ多いほど良い翻訳が来そうなイメージがありますが、これもまたイメージだけです。
登録翻訳者数はその翻訳会社専用の翻訳者の数ではなく、あくまでも“登録”されているフリーランス翻訳者の数です。仕事の受注率を上げるため、同じフリーランス翻訳者が複数の翻訳会社に登録します。つまり、どの翻訳会社に頼んでも、顔ぶれはほとんど同じです。A社に頼んだ翻訳が良くなかったからB社に頼んだところ、A社と似たような翻訳を納品された経験はありませんか?会社が違っても、同じ人が翻訳した可能性が高いです。
翻訳会社を選ぶときに見るべきところ
翻訳に必要なのは「安さ」だけなら、何社かの見積もりを比較すれば簡単に選べます。しかし、翻訳に求めるのはビジネスの成長なら、各社が提供する翻訳の“性能”を比べる必要があります。ここでは、その“性能”を見極めるためポイントを教えます。
誰が翻訳するのか?
翻訳という作業には翻訳、チェックやDTPなどの様々な作業がありますが、その中で最も大事なのはその核である「翻訳」です。そのため、「誰が翻訳する」という部分に注目する必要があります。
フリーランスと社内翻訳者の決定的な違いはアクセスできる情報量と経験値です。
フリーランスは激しい価格競争の中で仕事を取る必要があるため、翻訳会社から常に単価の引き下げ圧力に晒されています。企業でもそうですが、フリーランスの利益が下がると必要な投資(高価なコンピューターやCATツールなど)が難しくなり、翻訳の質も下がってしまいます。また案件の獲得が難しいため、常に仕事をしているわけではありません。
社内翻訳者の場合は会社が獲得した案件を一手に負うため、仕事が常に入っている状態です。こなす翻訳量が別次元なので、そこから貯まる経験値も多いです。また、クライアントの情報が完全に隠されるフリーランスと違って、社内翻訳者はクライアントの指示を直接聞いたり、直接質問できたりします。翻訳の品質において、翻訳者とクライアントが直接やり取りできることで大きな差が生まれます。
つまり、依頼する前に「誰が翻訳を対応するのか?」という質問をすることで、どのような翻訳が返ってくるのか想像できます。提供される翻訳の品質と支払う料金が釣り合っていると思ったら、その翻訳会社を選ぶ価値があります。
翻訳プロセスはどうなっているか?
設計におけるCADのように、翻訳ではCATツールというプログラムがあります。CATツールは翻訳者の作業負担を減らす便利なものですが、高機能で操作が難しく、使いこなせる翻訳者が少ないです。そのため、いまだに翻訳をWordの上書きで行う翻訳者が多いです。
CATツールを使うことで翻訳の質に天と地の差が出ます。CATツールが翻訳に与えるインパクトについて詳しく知りたい方はCATツールがビジネスにもたらすメリットをお読みください。
つまり、翻訳会社に仕事を依頼する前に、次のことを聞いてみてください:
- 翻訳にCATツールが使われるのか?
- どのCATツールが使われるのか?
- チェックはCATツールを使って行われるのか?
CATツールを使って翻訳を行っている翻訳会社なら、いずれの質問にも淀みなく、しかも分かりやすく説明してくれます。
翻訳プロセスの重要性については、翻訳プロセスが翻訳の品質に与える影響をチェックしてください。
まとめ
翻訳会社選びが難しいのは、どんな裏事情に気を付けて、どこを見ればいいのか分からないからです。それでは重視すべき効果や性能を比較できず、結局は値段だけの比較だけになってしまいます。
翻訳会社の選び方に失敗しないためには、ブローカーを見極める知識が必要です。その上で、翻訳する人と翻訳プロセスのそれぞれの特性を理解し、翻訳会社に相談を重ねることが重要です。いい翻訳会社は正確に、そして分かりやすく説明してくれます。
翻訳会社だけではなく、依頼全体の細かい注意点については翻訳依頼に失敗しないための注意点をチェックしてください。












