翻訳を依頼するとき、会社によって翻訳料金に大きな差があります。
同じ文章なのに金額が変わるのはなぜでしょうか。
この記事では、翻訳料金がどのような仕組みを分かりやすく解説します。
翻訳料金は主に3つの要素で決まる
翻訳の費用は文章の難易度、原文の量と作業内容の3つの要素で計算されます。
文章の難易度
文章の難しさによって翻訳の単価が変わります。簡単な文章は特別な知識がなくても誰でも読める・書ける文章です。逆に難しい文章は、医学や法律、マーケティングなどの特別な知識がなければ理解できない・書けない文章です。
原文の量
料金を一番左右させるのは間違いなく原稿の文字数です。文字数が多ければ多いほど高くなり、少なければ少ないほど安くなります。
文字数は原稿の文字数を指します。例えば、日本語のレポートを英語に翻訳する場合、日本語の文字数を元に計算を行います。そのレポートが英語で作成されて、日本語に翻訳する場合はワード数(単語の数)で計算します。
作業内容
翻訳の他に、スタイルガイド・用語集のチェックや納期の短縮、DTP(レイアウト調整)などの特別な作業が必要な場合、その分の料金も掛かります。単価に加算されるものやページ単位で計算される作業など、やり方は会社によって変わります。
文章の難易度で基本単価が決まる
誰でもできることは安い、一部の人しかできないことは高い。翻訳の世界にも需要と供給の法則が生きているからこそ、文章の難易度で単価が決まります。ここでは、単価が上がる具体的な理由を見ていきましょう。
専門分野
一般の人にとって医学や法律文書は意味不明で、辞書を使ったところで理解できる内容ではありません。その内容を理解するためには医学や法学などの勉強に、莫大な時間とお金を投入する必要があります。そんな投資ができるのはごく僅かな人たちだけです。
上記のような専門分野は医療や法律に限ったものではなく、金融や化学、ITなどの様々な種類があります。定義は難しいですが、“普通の人”が理解できないものはすべて専門分野だと思ってください。
その専門分野に精通している翻訳者が少なければ少ないほど、翻訳の単価が上がります。
技術文章/マーケティング文章
理解するのは簡単、書くのは難しい。ほとんどの人が英語を理解できても、思うように話せないのはそのためです。そこには“インプットとアウトプットの壁”があります。
翻訳も同じです。例えば、英語の広告の文章を読んで理解できたとしても、いざ日本語にしようとしたときになかなか書けません。なぜなら、その広告文は分かりやすさや面白さ、“商品を買う気にさせる”特別な文章です。その文章を編み出したプロのライター並みの技術力がなければ、日本語で同じように翻訳できません。意味が分かるけど、買う気が全く起きない文章になってしまいます。
理解するための専門知識があれば、書くための専門知識もあります。書くための技術が必要となると希少性が上がり、翻訳の単価も必然的に上がります。
原文の量(文字数・ワード数)
食材の“1キロ/何円”のように、翻訳も“1文字/何円”という形で料金が計算されます。ここでは、翻訳料金に大きなウェイトを占める文字数の計算方法や注意点について見ていきます。
基本的な計算方法
Wordなどの文書作成ソフトには文字カウント機能がありますが、基本的にその文字数が計算の根拠になります。
お見積もりの段階からCATツールを使用している翻訳会社なら、そのCATツールの解析結果に表示された文字数が計算の根拠になります。CATツールはそれぞれのプログラムのカウント機能より正確な解析を行うため、一般的にはその解析結果が使われます。
文章量が多ければ多いほど料金が増える
昔々、ページ数で料金を計算する文化がありました。原稿用紙1枚の400字の名残でしょう。しかし、パソコンが翻訳の必須ツールになると、Wordの1ページをちょうど400字で区切るのは職人芸です。わざとフォントサイズを小さくして600字を詰め込むツワモノも出たので、文字数で数えることが一般的になりました。
つまり、文字数が増えれば増えるほど翻訳料金が上がりますので、過不足のない適切な原稿作りが重要です。
文字が取れない場合は追加料金が発生する場合も
現場ではWordやExcel、PowerPoint、htmlやInDesignなどのファイルが原稿になることが多いです。これらのファイルをプロが作っていることが多いため、文字を正確に抽出してカウントできます。
しかし、たまにはテキストの写真、jpeg形式のスキャンデータ、“紙”が原稿になることもあります。この場合は文字の抽出ができないため、“文字お越し”や“原稿作成”などの追加作業が必要です。追加料金は文字単価や個別の作業費用として発生することが普通です。
追加作業は単価に加算される
翻訳単価に影響を与えるもう一つの要素は作業内容です。通常の翻訳を超えた作業が必要な場合、翻訳単価に加算される形で追加されます。
チェックの有無と難易度
翻訳のチェックは一般的に記憶と目視で行われることが多いため追加料金が掛かりませんが、用語集やスタイルガイドが絡むと追加料金と期間の延長が発生する場合があります。
そのため、用語集やスタイルガイドが付いている翻訳の場合はお見積もり時にその旨を知らせることが大事です。後出しでは高めの料金が追加される可能性がありますので、ご注意ください。
チェックの数
プロの翻訳者ならチェックはほとんど不要ですが、自分で十分なチェック体制を組めない未熟な翻訳者なら、チェッカー、コーディーネーター、品質管理部門(QA)やプロジェクトマネージャーまでの面々がチェックに加わる場合があります。
分厚いチェック体制で品質への期待が膨らみますが、目と記憶の間違い探しではいくら人を増やしても意味がありません。その人たちの人件費も当然発生するため、膨らむのは翻訳料金だけです。
豪華キャストによる大層なチェック体制よりも、ミスを漏らさない高精度なチェックシステムの方が価値があります。
レイアウト調整(DTP)作業
日本語は英語と比べてコンパクトで収まりがいいため、ファイルを英語にしたとき、タイトルが入らなかったり、ページ数が増えたり、見た目が大きく崩れることは至って普通です。見た目(レイアウト)の調整にも料金が発生します。
CATツールや翻訳メモリが料金に与える影響
今までの話だと翻訳料金が増える一方でしたが、その料金が下がる要素もちゃんとあります。ここではCATツールを使ったときに料金が下がる仕組みについて軽く説明します。
翻訳メモリ
翻訳メモリは原文と訳文のペアを保存するデータベースです。最初は空っぽですが、翻訳が蓄積すればするほど、そのデータベースを翻訳に使うことができます。
例えば、過去に翻訳したマニュアルの説明と今のマニュアルの説明が全く同じだったら、過去の翻訳をそのまま使うことができます。その部分は安い料金が設定されていることが多いので、翻訳メモリが貯まれば貯まるほど、翻訳料金が安くなる可能性があります。
翻訳メモリの詳細については翻訳メモリのメリットをチェックしてください。
重複率
似たような仕組みを持つのは重複率です。重複率はその原稿にある全く同じ文章の割合です。同じ文章なら一個だけを翻訳すれば残りは翻訳メモリで自動的に翻訳できるため、通常翻訳より安い単価が設定されています。
マニュアルやWebサイトで重複が発生しやすいので、その分大きな割引が適用されることが多いです。
CATツールの詳しい情報についてはCATツールのメリットをチェックしてください。
翻訳会社によって料金が大きく異なる理由
欲しいスマホのモデルさえ決まれば、どの店で買ってもそのスマホを入手できます。変わるのは値段だけなので、一番安い店で購入しようとするのは正しい判断です。
しかし、購入する店によって欲しいスマホのスペックがガチャのように変わったらどうでしょう?
技術と知識レベルがバラバラ
翻訳は工業製品と違って、決まった形やスペックはありません。やる人によって全く違う結果が出るので、10人のプロが翻訳しても、10通りの違う翻訳が出てきます。
チェックや翻訳プロセスも同じです。翻訳会社によって実施できるチェック、使える技術、工程全体を掌握する知識のレベルがバラバラなので、会社によって翻訳料金が大きく変わります。最先端の技術を使って精密なチェックを行う会社があれば、未だにアナログな方法でチェックする会社もあります。納品される翻訳のレベルに大きな開きがあるからこそ、翻訳で“相場”という概念が通用しません。
工業製品はどこで買っても同じ内容だから一番安い店で買うのは正しい判断ですが、翻訳は会社によって全く違うものが出るため、一番安いところを選ぶのは必ずしも賢明な判断ではありません。
翻訳料金の計算例
今まで説明してきた3つの要素を使って、翻訳料金の一般的な計算事例を説明します。以下は前提条件です:
- ソフトウェアのマニュアル
- 英語から日本語へ
- スタイルガイド2つ(自社とOS、数百ページ)
- 用語集あり(UIなど20万項目)
- ワード数:1万ワード
- 基本単価:20円
- スタイルガイドと用語集のチェック単価:10円
- 重複率10%(1,000ワード)
- 初めての翻訳
翻訳のみの単価は20円です。数百ページのスタイルガイドと主にソフトウェアのUIが入っている用語集のチェックとして、プラス10円が加算されます。最終的な翻訳単価は30円になります。
翻訳料金は原稿1万ワードに翻訳単価の30円を掛けた金額になります。この場合、30万円です。
重複率が10%ほど入っているため、その1,000ワード分の単価は半分の15円になります。よって、15,000円の割引が入り、最終的な翻訳料金は285,000円+消費税になります。
翻訳の単価や重複の扱い、割引の適用方法などは翻訳会社によって異なるため、金額も翻訳結果も大きく変わります。
まとめ
翻訳料金は一般的に「文章の難易度」、「文字数」と「作業内容」の3つの要素を基に計算されます。翻訳会社によって全く違う料金が出るのは、各社の知識量や技術力が異なるからです。そのため、“相場”という目安で値段を比較するのは極めて難しい。
いい翻訳を手に入れるためには翻訳料金の計算方法と翻訳の品質を決める要素を理解することが大事です。
翻訳を依頼するときの流れと注意点などについては翻訳依頼に失敗しないために知るべきポイントをお読みください。












