なぜ翻訳会社選びは失敗するのか?プロが教える判断基準

最終更新日:2026年3月27日
You are here:

翻訳会社はどこも同じに見えます。しかし、選び方を間違えると:

・翻訳のやり直しでコストが倍になる
・納期が遅れる
・社内での評価が下がる
――こうしたトラブルは珍しくありません。

この記事では、翻訳会社選びでよくある失敗とその原因を整理したうえで、
“実務で使える判断基準”を具体的に解説します。

この記事の内容

翻訳会社選びでよくある失敗パターン4つ

「翻訳会社選びに失敗した」というのは具体的にどういうことなのか?ここではよくある失敗とその原因を説明します。

安さで選んで品質が崩壊

翻訳会社を「安さ」で選んでしまったことが最も多い失敗の一つです。

安い翻訳会社を選ぶと誤訳だらけの翻訳を想像する人が多いですが、問題はそれだけではありません。安い翻訳会社は納期遅れをはじめ、追加料金の請求や原稿・クライアントの情報漏洩などの問題もあります。

これらの問題が起こるのは、安い翻訳会社ほどアウトソーシングで翻訳を行っているためです。つまり、自分たちで翻訳せず、より安い翻訳会社またはフリーランスにあなたの依頼を再委託するためです。

専門性が合っていない

言語が分かればどんな内容の文章も理解できる訳ではありません。

自分が得意とする分野ではないにも関わらず、どんな翻訳も受注しようする翻訳会社があります。受注さえしてしまえば、あとはその分野を得意とするフリーランス翻訳者(または別の翻訳会社)に翻訳を再委託すればいいからです。

二つ返事で「どんな分野も」・「世界の100言語」を対応できるという翻訳会社は要注意です。

見積もりの内容を理解せず発注

これは翻訳会社の問題というより、依頼者の確認不足です。

翻訳の品質は見積もり一枚で固められるものではありません。誰が・どのCATツールを使って、どんなプロセスで翻訳するかなどの細かな交渉を行って初めて翻訳の品質が決まります。お見積もりはその作業内容の対価を記すものであり、依頼者が要求した作業内容と金額を確認するための書類です。

お見積もりの内訳を確認せずに発注してしまうと予想外の翻訳が納品されます。

納品後に修正地獄

これは特にマニュアルやWebサイトなどの大規模な翻訳に良く発生する問題です。

数万字を超える翻訳の場合、用語集やスタイルガイドは付き物です。会社やプロジェクトの規模が大きければ大きいほど、用語集・スタイルガイドの内容が膨らみます。その内容を暗記して目で探すというやり方は依然として行われているため、品質の低い翻訳を納品する翻訳会社が多いです。

その結果、納品された翻訳を依頼者が膨大な時間と費用を掛けて、社内で修正を延々と行う地獄の日々が待っています。

私たちがメーカーでマニュアルを外注していた頃、納品後の修正で社内は常に戦場のような状況でした。予想外のコストはもちろん、公開延期などの痛手も経験しました。私たちが実際に体験した問題を知りたい方は翻訳会社に依頼してもやり直しが発生する理由をチェックしてください。

なぜその失敗が起きるのか

長さやピッチなどが規格で決まっているネジは誰が作っても同じ寸法なので、安さで選ばれることが多いです。

一方で、翻訳に決まった“規格”はなく、10社がやったら10通りの異なる翻訳が出てきます。その出来・不出来を決めるのは「翻訳プロセス」(誰が、何を使って、どのように翻訳したのか)です。翻訳会社によって値段も品質もバラバラなのは、各社が独自のプロセスで翻訳を行っているからです

翻訳会社の選び方|本当に重要な判断基準

翻訳の品質を決めるのは「誰が、何を使って、どのように翻訳したか」という翻訳プロセスであれば、翻訳会社を選ぶときはその翻訳プロセスを一つの判断基準にすればいいのです。本当かどうか分からない“実績数”や異常な“対応言語数”ではなく、「あなたの翻訳がどのように行われるか」です

ここでは翻訳プロセスを中心に、これから翻訳を依頼するあなたが本当に見るべきところを説明します。

翻訳プロセス① - 誰が翻訳するのか

翻訳の8割を決めるのは翻訳者です。腕のある翻訳者が対応すればチェックはほとんど不要ですが、レベルの低い翻訳者ならいくらチェックしても足りません。

自ら翻訳を行う翻訳会社は皆無に等しく、ほとんどの場合はフリーランス翻訳者に再委託されます。その翻訳を行うフリーランスの専門分野、知識と技術力を確認しましょう。

翻訳プロセス② - 何を使って翻訳するのか

良い仕事はいい道具から。

現実的な納期で高い精度の翻訳・チェックを行うためには、CATツールの使用は欠かせません。未だに行われている“ファイル上書き”ではなく、TradosなどのCATツールが使用されているかどうかを確認しましょう

翻訳プロセス③ - 品質管理体制はどうなっているのか

記憶力と目だけで漏れのないチェックはできるのか?

用語集やスタイルガイドの数万件にも及ぶチェック項目を僅かな期間で正確にチェックするためには、CATツールと正規表現を組み合わせた最新の技術が必要です。依頼しようとしている翻訳会社はそのチェック体制を論理的に説明できていますか?それとも、昔ながらの“人海戦術”を提案しているのか?

翻訳プロセスについて詳しく知りたい方は品質を決める翻訳プロセスをお読みください。

営業担当者の知識

あなたの思いを形にする営業担当も重要な判断基準になります。なぜなら、ほとんどの営業担当は翻訳のことを理解していません

依頼者が求める翻訳に最適な提案を出すためには、言語の特性を理解し、翻訳の技術的な知識と長い実務経験が必要です。しかし、営業担当のほとんどが元翻訳者でなければ、外国語も分かりません。

営業担当に話せる言語や翻訳の経験を聞いて、提案された翻訳プロセスが確かな知識と経験から生まれたかどうかを確認しましょう。

見積もりの正しい読み方

翻訳会社に翻訳関連ファイルと要望を伝えたら、お見積もりを作ってもらえます。ここでは、お見積もりを確認するときのポイントをまとめました。

単価だけで判断してはいけない理由

見積書の安い単価を見て「ラッキー!」と思う気持ちは分かりますが、ここは冷静に判断する必要があります。なぜ単価が安いのか?

技量を量る免許や資格がないフリーランス翻訳者は“実力の世界”です。腕のある翻訳者は単価が高く、能力が低い翻訳者は単価が安いです。腕のあるフリーランス翻訳者は翻訳会社ではなく、依頼者と直接取引することが多いです。

では、その翻訳会社が出した安い単価の見積もりは、どんなフリーランス翻訳者を想定したものだろうか?先ほど説明したように、翻訳者の腕で翻訳の8割が決まります。納品後の修正地獄に陥らないように注意が必要です。

含まれている工程(翻訳/校正/レビュー)

見積書の単価にどんな作業内容が含まれているのか?翻訳のみ?チェック込み?

追加料金に不意打ちされないように、見積書の単価にどんな作業が含まれているか詳しく確認しましょう。ほとんどの場合は相談の段階で決まりますが、窓口が複数いる場合(営業担当の他にコーディネーターやPMなど)、伝言ゲームが上手く機能しない可能性があります。

MTPEか人力翻訳か

見積書に非常に安い単価が記載されていた場合、MTPEが使われている可能性があります。

人間の翻訳とMTPEが混在する中、「翻訳」はどの翻訳方法を指すのか?人間の翻訳しかやらない翻訳会社があれば、「“翻訳”といえばMTPEだろ?」と考える翻訳会社もあります。そのような会社に“翻訳”を頼むと、単価が安いが低品質なMTPE翻訳の見積もりが送られてきます。

このまま翻訳を発注すると納品後の頭痛が増えるだけなので、翻訳が人間の翻訳なのか、それともMTPEかどうかを確認しましょう

安すぎる見積もりの危険サイン

相場より極端に低い単価は経験の浅い翻訳者や海外の低単価外注である可能性があります。修正すれば何とかあるレベルの翻訳ではないので、注意が必要です。

原稿の状態やあなたの要望を聞かずに異様な速さでお見積もりを出す業者には要注意です。安いお見積もりを誰よりも早く出して受注し、追加料金であとから金額を引き上げる典型的な手法です。

翻訳会社 vs フリーランス|どちらを選ぶべきか

翻訳会社に依頼しても結局はフリーランスが翻訳するなら、最初からフリーランスにお願いした方がいいのでは?

ここでは、翻訳会社とフリーランスそれぞれの特徴と選ぶ基準を説明します。

フリーランス翻訳者が向いているケース

フリーランス翻訳者に直接お願いすることで、より高品質な翻訳を手に入れる可能性があります。なぜなら:

  • 依頼者と翻訳者が直接やり取りできる
  • 意思の疎通に邪魔な“伝言ゲーム”がない
  • 腕のある翻訳者に出会う可能性がある

品質のカギを握るのは翻訳者です。その翻訳者に依頼者が要望を直接伝えることで、翻訳者がその要望を的確に実現できます。また、翻訳者も質問がある時に、その答えを持っている依頼者に直接聞くことができます。つまり、直接コミュニケーションできることで品質が大きく向上します

翻訳会社を挟んだ不要な伝言ゲームによって、依頼者と翻訳者のコミュニケーションがどうしても阻害されます(要望が正しく伝わらなかったり、質問の答えが無かったりします)。直接やり取りする価値はお互いの完璧な意思疎通にあります。

また、腕のある翻訳者の翻訳単価は翻訳会社とそれほど変わりません。つまり、翻訳会社経由では出会うことがない翻訳者から、高品質な翻訳を納品される可能性が高いです。

ただし、星の数ほどあるフリーランス翻訳者から実力のある翻訳者を見つけるまで、忍耐と根気が求められます。

翻訳会社が向いているケース

単純に言えば、翻訳会社は自分の代わりにフリーランス翻訳者を選ぶ業者です。つまり、自分でフリーランス翻訳者を選んで交渉する自信がなければ、翻訳会社に頼んだ方が手間が省けます

ただし、翻訳会社に依頼する場合、次のことを理解する必要があります:

  • 翻訳会社と翻訳者を結ぶのは請負契約
  • 翻訳会社も利益を得る必要がある

翻訳会社はフリーランス翻訳者に業務を再委託するため、請負契約に基づいて仕事します。請負契約は“結果”に重きを置いた考え方です。翻訳の品質を上げるために必要な変更や細かな指示などがその“過程”で行われると指揮命令に当たる可能性があり、偽装請負に問われる可能性があります。

また、翻訳会社も利益を得なければなりません。翻訳会社の取り分は単価の50~75%なので、どうしても安い・能力が低いフリーランス翻訳者に業務が再委託されます。腕のある翻訳者が翻訳会社と取引しないのはそのためです。

どっちを選ぶべきかの判断基準

では誰に頼めばいいのか?
次の場合はフリーランス翻訳者を検討する価値があります:

  • 翻訳の規模が小さい
  • リスクが低い
  • 何回でも試す余裕がある
  • 時間が掛かっても高品質な翻訳が欲しい

下記のような状況では、翻訳会社を検討します:

  • 大規模な翻訳
  • 失敗すると犯人捜しが始まる
  • デッドラインが決まっている
  • 無難な結果でいい

依頼者が必ずやるべき準備

翻訳会社かフリーランスを問わず、翻訳の品質を決めるもう一つの重要な要素はあなた自身です。お見積もりの前に依頼者が知っておくべきこと、やっておくべき準備を詳しく説明します。

原稿の整理

マニュアルやWebサイトなど、用語や表現の統一が一つの「品質基準」である翻訳がたくさんあります。しかし、原文の用語や表現がバラバラだったら、訳文の用語も表現も当然バラバラになります。

原稿をお見積もりに出す前に必ず用語や表現を統一しましょう。このひと手間を掛けるだけで、翻訳の品質が上がるだけではなく、不要なコストを抑えて、納期を縮めることもできます。

用語集・スタイルガイドの共有

翻訳の品質に規格が存在しないため、品質にバラつきが生まれることを既に説明しました。規格がなければ、その品質の基準を作ればいいのでは?

大規模な翻訳において、品質の基準となるのは用語集やスタイルガイドです。用語集はその会社が使う独自の単語です。その独自の用語を使うことで、会社や商品のブランド力を高めたり、売り上げを上げたり、内容をより分かりやすくできる効果があります。詳しく知りたい方は用語集のメリットをチェックしてください。

もう一つのスタイルガイドは、表記や表現のルールを決める“ルールブック”です。用語集同様、マーケットで差別化を図る上で欠かせないツールです。

その用語集とスタイルガイドを原稿と一緒に提出することで、翻訳プロセスや納期などが明確になり、適正な値段で高品質な翻訳を出すことができます。ポイントはお見積もり時に出すことです。翻訳が始まってからでは適正な作業期間の確保が難しく、追加料金が発生する可能性があります。

翻訳の目的(誰に、何のために読ませるか)

翻訳には必ず目的があり、ターゲットとなる読み手も決まっています。見積もり時にその情報を伝えることで、翻訳者が読み手に刺さる文章を作ることができます。特にマーケティング関連の翻訳では、ペルソナなどの情報が重要です。

AI翻訳はどこまで使えるか

翻訳会社とフリーランスの間で迷いに迷った挙句、予算の都合上にAI翻訳を検討する依頼者も少なくはない。ここでは、AI翻訳の実力と使えるケースについて説明します。

AI翻訳を使う前に、AI翻訳のメリットとデメリットをお読みください。

AI翻訳の実力

AI翻訳は下手な翻訳会社やMTPEよりずっと上です。誰にも怒られず、屁理屈言われることもないため、原文の不要な部分を省きながら、必要な部分を自然な訳文に仕立てます。

AI翻訳の限界

読みやすい文章を作るAI翻訳ですが、一定の確率で誤訳を出します。ソース言語・ターゲット言語の両方を理解できる人なら気づきますが、母国語しか分からない人は鵜呑みにするしかありません。また、AI翻訳はクラウド翻訳のように、データセキュリティの問題が常に付きまといます。

AI翻訳が使えるケース

AI翻訳は両言語を理解し、翻訳のスキルを持っている翻訳者なら問題なく使えます。翻訳者がAIの翻訳を“監視”することで、間違いのある個所に気づき、どのように修正すればいいのか分かります。両言語を理解できるだけでは足りません。翻訳者の文章能力も必要です。

AIの“罠”などについてはビジネスでAIを使っていい人、触らせてはいけない人を参照してください。

AI翻訳のコスト

無料プランのAIサービスなら翻訳がタダになりますが、監視役の翻訳者が必要なので、ゼロコストで使える翻訳を手に入れることはできません。

まとめ|失敗しないためのチェックリスト

翻訳会社を選ぶ判断基準はいかがだったでしょうか?この判断基準は私たちがメーカーで働いていたころ国内外の翻訳会社に依頼していた時の経験、翻訳会社で働いていた時に見てきたもの、そして社内翻訳者としての視点を総合的に勘案した判断基準です。

社運を賭けた大事な翻訳だからこそ成功したい。その気持ちを大切しているからこそ、厳しい判断基準になっています。翻訳を依頼する前に、次の基準を思い出しながら、確実に期待を応えてくれる翻訳会社を選びましょう。

翻訳プロセス

最も大事な基準です。誰が、何を使って、どのように翻訳したのか。翻訳者が品質の8割を決めるからこそ、慎重な判断が求められます。翻訳者と直接話せるチャンスがあればいろいろ聞いてみてください。CATツールや技術的な話を分かりやすく説明してくるはずです。

営業担当の知識

依頼者の希望を形にする翻訳のプロです。翻訳に関する豊富な知識と実務経験が求められます。営業担当の翻訳者としての経験を積極的に聞いてみましょう。

見積もり内容

安すぎないのか?ここはなぜこうなっているのか?裏がないのか?理解できないところを全部聞いて、納得してから発注しましょう。

翻訳会社・直接フリーランス

翻訳者を探したり、交渉したりする時間がない場合は翻訳会社に頼むべきです。逆に、急ぎの案件ではなく、時間が掛かっても高品質な翻訳が欲しい時はフリーランスに直接依頼しましょう。

翻訳者と直接やり取りできる翻訳会社
Intenciaは翻訳者だけで構成されている珍しい翻訳会社です。社内翻訳者ならではの深い知識と技術であなたの期待を形にします!

この記事を書いた人たち:

Picture of Intenciaチーム
Intenciaチーム

日本と海外を遊び尽くし、翻訳とマーケティングに長く携わっている“いい歳している”大人たち。自分たちの手で立ち上げた会社を通じて、多角的な視点と本質を射抜く経営観を日々養っている。

作成日:2026年3月27日
最終更新日:2026年3月27日

関連記事