MTPE単価のからくりとは?機械翻訳+ポストエディットで失敗しないためにあなたが知るべき問題点と上手な付き合い方

最終更新日:2026年2月25日

「翻訳費用を抑えたい」。「納期を短くしたい」。

翻訳会社が必死に勧めるMTPE(Machine Translation, Post Edit、以下、“機械翻訳”)を受け入れる企業が増えています。しかし、「品質が低くブランドが傷ついた」、「結局やり直しでコストが増えた」という声も後を絶ちません。なぜその問題が起きるのか?そしてクライアント(発注者)は何をすべきか?

この記事の内容

結論:機械翻訳は仕組みを理解した上で使い分ける必要がある

この世にうまい話しはない。

機械翻訳+ポストエディットの料金が安いのは、翻訳会社が一方的に、翻訳者に支払う報酬を従来の30%以下に下げているからです。70%もコスト削減できれば、クライアントに20%程度の割引を上げることなど、お茶の子さいさい。

しかし、翻訳者もバカではない。報酬が30%に下げられたら、品質も30%に落とすのがこの世界のルールです。結局損しているのは、役に立たない“形だけ”の翻訳を掴まされたクライアントです。

このことから、機械翻訳+ポストエディットはブランドイメージの損失や法的トラブルの危険性をはらんでいます。機械翻訳を使う場合はその仕組みと特性を十分理解した上で、“害が少ない翻訳”(客の目に触れない社内資料など)に限定するなどの防衛策が必要です。

つまり、「社内向けは機械翻訳」、「顧客向けは通常の翻訳」という使い分けが重要です

MTPEの品質が低い4つの理由

機械翻訳の品質はなぜ低いのか?
その理由を知るためには、機械翻訳の仕組みと翻訳会社・翻訳者間で起きている問題を理解する必要があります。

機械翻訳ポストエディットの品質が低い理由は複数ありますが、概ね次の4つの原因に絞ることができます:

  • 機械翻訳の精度
  • 機械翻訳の独特な報酬計算
  • プロの翻訳者は機械翻訳に応じない
  • 機械翻訳の「報酬-品質同水準」の原理

MTPEの精度

機械翻訳+ポストエディットはその名の通り、原稿を機械翻訳で埋め尽くしてから、人間の翻訳者に添削(ポストエディット)させる翻訳方法です。ここで重要なのは機械翻訳の精度です。

機械翻訳の実力はみんなが知っているGoogle翻訳レベルです。単語程度や言葉が全く通じない旅行先では大助かり。しかし、カルテや仕事の資料など、自分の命やお金が掛かっている場面では、誰も使われたくないものです。

このように、機械翻訳は旅行などでは助かりますが、仕事レベルでは使えません

MTPEの独特な報酬計算

普通の翻訳では、翻訳者が文章をゼロから翻訳します。1,000文字の原稿なら、1,000文字を翻訳します。そして、それぞれの翻訳者に「文字単価」があり、文字単価が10円だったら、1,000文字×10円=10,000円がその翻訳者の報酬になります。

機械翻訳の場合、翻訳会社が翻訳者に対してこんな詭弁を展開します:
「丸ごと翻訳するのは大変だから、単価の100%を払うのは正しいです。しかし、機械翻訳+ポストエディットでは機械が一番大変な翻訳を既にやっていますので、あなたは簡単な添削だけをすればいい。軽くて単純な作業なので、報酬は単価の30%です。いやなら断ってもいい。」。

つまり、機械翻訳では翻訳者の単価が一方的に10円→3円に下げられます。1,000文字の機械翻訳+ポストエディットでしたら、翻訳者の報酬は1,000文字×3円=3,000円になってしまいます。

このように、翻訳会社が利益率を上げるため、立場が弱い翻訳者の単価を一方的に下げます

プロの翻訳者は当然、MTPE案件に応じない

単価が30%以下に下げられたらコストも賄えません。そのため、プロの翻訳者が機械翻訳案件を引き受けることはありません。高品質な翻訳の需要は変わらずあるため、腕のある翻訳者は機械翻訳を手掛ける翻訳会社と手を切り、役に立つ翻訳を求めるクライアントの依頼を選びます。

結局、機械翻訳案件に応じるのは経験が浅く、実績を何とか増やしたい駆け出しの翻訳者です。これだけで翻訳の品質が一段と下がります。

このように、機械翻訳のポストエディットをやっているのはほとんど経験が浅い翻訳者です

MTPEの「報酬-品質同水準」の原理

機械翻訳の台頭で業界全体の仕事数が減りました。プロとして経験を積んでいる翻訳者でも、収入のためにやらざる得ない場合もあります。切実な状況です。

翻訳会社は常に利益率を上げようとしているため、翻訳者と翻訳会社の駆け引きは昔から行われています。翻訳会社は圧倒的に優位な立ち位置なので、そこに対等な交渉は存在しません。翻訳会社の一方的な要求に対し、翻訳者は翻訳の品質で調整してきました。

つまり、単価の100%を払ってくれれば、100%の品質を提供します。一方的な“ディスカウント”で単価が80%になったら、翻訳の品質も80%になります。

機械翻訳では翻訳者の単価が本来の30%程度なので、翻訳の品質も30%程度になります

MTPEのスキームでクライアントが陥る5つの落とし穴

翻訳会社が編み出した複雑なスキームで、クライアントは気づかずに5つの問題に直面します:

  • 単価が下がれば、品質も比例して下がる
  • 「MTPEの納期が短い」はミスリード
  • 翻訳会社が“中抜き”構造になっていることも
  • 目先のコストダウンが将来のブランドリスクに
  • 見えない損失:情報、著作権と知的財産の漏洩

単価が下がれば、品質も比例して下がる

翻訳者の報酬が本来の30%に低下すると、翻訳の品質が著しく低下します。30%しかもらっていない翻訳者は最低限の誤字・脱字の修正しかできません。翻訳の意味が正しいかどうか、読みやすい文章かどうかなどの問題はそのままにになります。

機械翻訳を手掛ける翻訳会社同士の競争が激しくなると、その傾向がさらに強くなります。翻訳者の報酬がさらに下がれば、品質も当然、さらに下がってしまいます。

このように、機械翻訳に安さを求めれば求めるほど、もはや使えない翻訳が納品されます

「MTPEの納期が短い」はミスリード

機械翻訳とポストエディットを使えば、納期を最大5分の1に短縮できると宣伝する翻訳会社があります。それは嘘ではないと思います。なぜなら、機械翻訳の処理時間は大きいファイルでもたった数分です。

しかし、今まで見てきたように、機械翻訳の品質は通常翻訳の30%しかありません。機械翻訳で作った「翻訳」と通常のやり方で人間が作った「翻訳」は同じものと言えるのだろうか?

通常のラーメンを作るのに10時間掛かるとしよう(スープが大変)。インスタントラーメンはたった3分でできます。圧倒的な差ですが、全く別のものである以上、比較すること自体は合理性に欠ける。

このように、機械翻訳の納期が短いという主張は結果物を度外視し、クライアントの誤解を誘ったミスリードです

それでも、ラーメンとインスタントラーメンは”同じラーメン”というなら、翻訳と機械翻訳も”同じ翻訳”と考えても問題ありません。

翻訳会社が“中抜き”構造になっていることも

実際には翻訳会社が予算の大部分を取って、翻訳者にきちんと報酬が届いていないケースもあります。受注した翻訳会社が別の翻訳会社に再委託するときはこれに当てはまります。この場合、翻訳者は単価の30%を下回る報酬で作業するため、クライアントが受け取る翻訳の品質はさらに下がります。

建設業のように、翻訳業界でも再委託の再委託は当たり前のように行われています。

目先のコストダウンが将来のブランドリスクに

企業イメージに影響を及ぼす誤訳・不自然な表現は、信頼性や製品の価値を損ないます。目先の安い翻訳で節約できたとしても、ブランドが受けるダメージや顧客離れによって失われる売り上げの方がはるかに大きい。

見えない損失:情報、著作権と知的財産の漏洩

機械翻訳の精度を高めるため、“エサ”となる原稿と翻訳文で学習させる必要があります。つまり、あなたが依頼した原稿の内容(契約内容やマーケティング資料などの社外秘情報)と、数々のフィードバックを経て作り上げられた翻訳も機械翻訳に学習(蓄積)されてしまいます。

機械翻訳+ポストエディットを行う翻訳会社から事前の説明があって、契約にもその旨が記載されていれば問題ありません。しかし、いずれもない場合、翻訳会社の他のクライアントに、あなたの会社の情報、知的財産、著作権などが無断で使用されている可能性があります。

クライアントが取るべき2つの戦略

機械翻訳の特性を理解した上で、クライアントは次の2つのオプションが残ります:

  • MTPEを目的に合わせて使い分ける
  • 翻訳の“投資対効果”(ROI)に注目する

MTPEを目的に合わせて使い分ける

機械翻訳の品質が悪いですが、どこかで使えないのか?

機械翻訳の最大のデメリットは機械損失と売り上げの減少ですが、ブランドがダメージを受けるのは顧客向けに機械翻訳を使った場合です。つまり、機械翻訳を社内向け資料や顧客の目に触れない原稿に使えば、致命的なデメリットを避けることができます。

翻訳の“投資対効果”(ROI)に注目する

機械翻訳の魅力はその安さですが、社内のための内容把握の翻訳に限定されてしまいます。販促ツールに使えるレベルではないため翻訳を再利用する価値がなく、掛け捨て翻訳という性格が強いです。

安い翻訳によって失われるリード、取り逃がす契約、傷つくブランドの価値を可視化すれば、「質の高い翻訳」の方がむしろ得策であることが分かります。

今日の翻訳を資産としてしっかり翻訳メモリに残し、その資産を上手に運用することで、明日の会社のブランド力と現場の効率性が雪だるま式のように向上します。

掛け捨てのMTPEか、結果とリターン重視の運用型翻訳か

機械翻訳はお金を取り巻く“不都合な真実”によって、クライアントと翻訳者が大きなダメージを被る構造になっています。背景を知らずに安い機械翻訳に飛びつくと、数十万の節約が数千万の売り上げ減少につながります。機械翻訳の特性を理解した上で、使ってもいい原稿と避けるべき原稿を分ける必要があります。

Intenciaは100%人間の翻訳であなたのブランドイメージを高め、専用の翻訳メモリで翻訳資産を蓄積・運用します。「翻訳は投資」だからこそ、投資対効果の高い翻訳サービスを提供しています。掛け捨ての機械翻訳にさよなら。効果重視の運用翻訳へようこそ。

この記事を書いた人たち:

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Intenciaチーム

日本と海外を遊び尽くし、翻訳とマーケティングに長く携わっている“いい歳している”大人たち。
自分たちの手で立ち上げた会社を通じて、多角的な視点と本質を射抜く経営観を日々養っている。

作成日:2024年5月9日
最終更新日:2026年2月25日

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