翻訳依頼に失敗しないための注意点

最終更新日:2026年3月9日
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翻訳は大きいもので数千万円の費用が掛かります。
大きな投資だからこそ失敗できないものです。

この記事は翻訳業界特有の構造と失敗を防ぐために
あなたが知るべきポイントを分かりやすく説明します。

この記事の内容

翻訳会社に翻訳を依頼した時のよくある失敗

翻訳を依頼する人の多くは次の問題を経験しています:

  • 翻訳が誤訳とミスだらけで莫大な時間と費用を掛けて社内で修正した
  • 見積もりは安かったが発注してから追加料金を請求された
  • 約束された日に納品が間に合わず、会社が損失を被った
  • 原稿のデータが漏れて未発表商品の情報が漏れた

これらの問題が発生するのは、それぞれの翻訳会社に独自の構造と仕事のやり方があるからです。その問題を回避するためには、依頼者がその構造とやり方を知ることが大事です。

この記事は翻訳会社の選び方から各工程の裏事情まで、翻訳依頼で失敗しないために依頼者が知るべきポイントを詳しくまとめました。

翻訳会社を選ぶときに気を付けるべきポイント

翻訳会社は星の数ほどあります。なぜ多いかというと、翻訳会社は儲けが出やすく、外国語が全く分からなくても始められる商売だからです。この“おいしいビジネス”を狙って翻訳会社が乱立し、その乱立によって価格崩壊が起き、価格崩壊で品質が地に落ちました。その中から翻訳会社を選ぶのは確かに難しいです。

ポイント1- 翻訳を行うのは依頼者が託した翻訳会社?それともさらに別の翻訳会社?

翻訳業界では、あなたが信用して作業を託した翻訳会社が翻訳を行うとは限りません。あなたの依頼をさらに別の安い翻訳会社に再委託し、その間の利益を取ろうとします。しかも、翻訳者が見つかるまで数社が間に入ることもざらです。

依頼者と翻訳者の間に中抜き業者が増えれば増えるほど、返ってくる翻訳の品質は払った金額の10分の1以下に落ちます。

翻訳会社を選ぶとき、「実際に誰が翻訳するのか」をしっかり確認することが大事です。

ポイント2- 対応するのは社内翻訳者?それともフリーランス?

翻訳者が「社内翻訳者」か「フリーランス」によっても大きな差が出ます。なぜなら、両者には圧倒的な経験値の差があります。

翻訳業界に度を越えた価格競争が発生し、フリーランスはもう翻訳だけで生活できない状況です。その多くはメインの仕事を持ち、翻訳依頼が取れたときだけ翻訳を行います。そのため、実際に対応できる翻訳が少なく、経験値がなかなか貯まりません。

他方で、社内翻訳者は翻訳会社が受注した依頼を日々対応しています。そのため、脳みそに入ってくる翻訳量と情報量が全く違います。

翻訳依頼の成功と失敗を分ける「翻訳プロセス」

翻訳の品質、費用、納期に直接影響を与えるもう一つの要素は「翻訳プロセス」です。翻訳プロセスは原稿がどのように処理され、どのように品質チェックが行われたかなど、翻訳の開始から納品までの一連の流れと方法を指します。

良い仕事には良い道具が使われるように、良い翻訳には良いCATツールが使われます。ここからはそれぞれのCATツールとチェックポイントを説明します。

翻訳の全体的な作業効率を上げるCATツール

CATツールは原稿を翻訳しやすい形に変換して、翻訳者の作業負担を軽減するアプリケーションです。圧倒的な機能性でプロの現場を支えるTradosやTransitの他に、手軽さがメインのmemoQやPhrase(旧Memsource)などがあります。

CATツールの詳しい説明やメリットなどを知りたい方は「CATツールのメリット」をお読みください。

ポイント3- 翻訳者がCATツール使っているのか?それともファイル上書きか?

翻訳会社がいくらCATツールを使うと宣伝しても、肝心の翻訳者がCATツールを使わなければ意味がありません。CATツールのメリットは翻訳者が使って初めて引き出されます。Wordで渡された原稿に直接翻訳するのはあってはならない方法です。

ポイント4- 実務レベルのCATツールを使っているのか?

CATツールはかなり高価なアプリケーションであり、導入できる翻訳者・翻訳会社は少ないです。また、その特殊性から使いこなせる人がさらに少ないため、本当に扱える人はごく一部です。投資の回収不能を恐れて、無料のCATツールを使う人が多いです。

無料のCATツールは機能が大幅に制限されているため、実務レベルの品質は出せません。また、その多くは原稿の情報を入手できるからこそ“無料”なので、無料のCATツールを使っている業者はやめた方が賢明です。

翻訳の品質、コストと納期に影響を与える翻訳メモリ

翻訳メモリは原文と訳文のペアが保存されるデータベースです。過去に翻訳した全く同じまたは類似の文章が出てくると、CATツールが翻訳メモリの中を検索し、過去の翻訳を案として提示します。翻訳メモリのデータは蓄積すればするほど再利用できる翻訳が増えるため、品質(翻訳の統一という観点)、コスト(翻訳の再利用)と納期(翻訳スピードが上がる)にメリットがあります。

ポイント5‐翻訳メモリは自社専用になっているのか?

翻訳メモリは品質とデータセキュリティの観点から企業ごとに分けて運用します。しかし、利益率を上げるため、業者によっては翻訳メモリをまとめたり、他社の翻訳メモリをあなたの原稿に使ったりします(逆の場合もあります)。

翻訳を依頼する前に、翻訳メモリがどのように運用されているかを確認することも大事です。

ポイント6- 翻訳メモリはスタンドアロン?それともクラウド?

もう一つの盲点は翻訳メモリが保存される場所です。通常は普通のファイルとして翻訳者が直接管理しますが、最近はクラウド型の翻訳メモリが出ています。クラウドサービスに情報漏洩の要因が多いため、企業と原稿の情報を一つの資産として考える依頼者は要注意です。

会社が好む用語のルールを決める用語集

“カー用品”も“車用品”も同じものを指し、どちらも正しいです。ただし、会社によって正解が異なります。用語集は単語における“会社の好み”を決める単語集です。用語が1件しかない用語集なら暗記できそうですが、1万件以上入っている用語集なら話が変わります。

ポイント7‐ 用語集は記憶力に頼っているのか?

15日前の朝ごはんに食べたものも思い出せない人間が、100件以上の用語を九九のごとく間違えずに使えると思いますか?

用語集を確実に適用するためにはCATツールに用語データベースを連携させ、翻訳後も確実にチェックする必要があります。目で文章を追いながら、記憶を頼りに赤ペンで間違いをさがすなど以ての外です。 依頼した翻訳会社に用語集の運用とチェック方法も確認しましょう。

用語集の詳しい情報については「用語集のメリット」をお読みください。

用語以外のルールを決めるスタイルガイド

「単語以外の全て」が対象であることが最大の特徴です。それゆえ、スタイルガイドが百数ページの“本”になったり、ルールの数とバリエーションは10万通りを上回ったりすることがあります。

ポイント8‐ スタイルガイドも記憶力と気合でやっているのか?

用語集同様、スタイルガイドはどのように運用・チェックされているのか?ルールの数とその複雑さを考えると、目視と記憶力だけでは絶対チェックできません。依頼した翻訳会社が合理的なチェック方法を提示せず、“人海戦術”などと大真面目に回答したら要注意です。

品質を決定づける翻訳後のチェック方法

人間はミスする生き物です。その“不都合な事実”があるからこそ「チェック」が重要です。しかし、チェックもミスする生き物がやったら話になりません。一体何を保証できるというのか?

ポイント9‐ 記憶力と赤ペンでチェックしているのか?

先ほど説明したように、用語集やスタイルガイドの数万件にもおよぶ項目を頭に入れて、目で“間違い探し”を行うのは非現実的です。どれだけの人間を使おうが、チェックの精度が上がることはありません。翻訳の規模を問わず、正確なチェックを行うためにはコンピューターの力は欠かせません。

翻訳のチェックは翻訳者が自ら正規表現を組んでチェックリストを作っているかどうか確認しましょう。

ポイント10‐ 正規表現は日本語が分かる人が作っているのか?

これは特に大手の翻訳会社で起きる問題です。正確なチェックを行うためには正規表現は欠かせない技術ですが、日本で使いこなせる人がほとんどいません。そこで、海外に支社を持つ大手の翻訳会社はこぞってITが強いとされるとある国のエンジニアにチェックリストの作成を依頼します。

その国のエンジニアは日本語が全く分からないため、形だけで精度が低い(偽陽性)のチェックリストを作ります。そのチェックリストを実行すると結果は偽陽性だらけです。すべてを正確にチェックする時間がないため、本当に修正しなければならない誤訳(真陽性)がそのまま納品されてしまいます。

翻訳のチェックリストはその言語が分からなければ作れません。チェックリストが海外で作られている場合、注意が必要です。

まとめ

翻訳の依頼に失敗する人が多いのは、翻訳業界は“失敗しやすい”独特の構造を持っているからです。失敗を防ぐためにはその構造を理解し、自分に合う・合わない翻訳会社を判断する必要があります。

翻訳の依頼は家の発注と同じです。話に乗せられて騙されないように、自分で色々調べて、知識を付けることが大事です。

“ココ”が分からないから相談したい
翻訳の“良く分からない”にお答えします。
相談は無料です。現場の翻訳者が分かりやすく説明します。

この記事を書いた人たち:

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Intenciaチーム

日本と海外を遊び尽くし、翻訳とマーケティングに長く携わっている“いい歳している”大人たち。
自分たちの手で立ち上げた会社を通じて、多角的な視点と本質を射抜く経営観を日々養っている。

作成日:2026年3月9日
最終更新日:2026年3月9日

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